草野 裕樹
経済が冷え込み始めて約一年がたつ。その間に多くの企業が倒れ、政権すらとってかわってしまった。目を札幌市内に向けると建築中の建物が資金流動が停止したためそのままホロを被って中断したままというものも珍しくない光景となった。当社の近くにも二棟、建築のストップしたままのホテルがあるが見ていると今の経済状態を反映しているように思えてくる。
不動産市場においても例外はなく、市内のマンション・アパート空室も本当に多くなり室内に貼る広告ビラや募集チラシはかなり目につくようになった。しかし、逆行しているのは紙を媒体とした広告の中でも「雑誌」による募集宣伝である。雑誌の広告媒体がなくなることはないが、出ている物件の量も質も下がっているのが現状である。というのは、以前から出していた不動産会社でも紙の媒体をやめ、それに代わってインターネット広告を利用するようになったためである。広告募集者としては収益を下げるわけにはいかないので価格を下げ、質より量を重視し広告募集をすることにもよる。紙の媒体の最大の弱点は「手軽さ」である。コンビニに行ってフリーペーパーを持ってくるという他愛もなく、簡単な行為も、「ネットを開く」という行為に比較した場合はひどく億劫な行動になってしまうのである。今はパソコンがなくても携帯電話でキーワード検索をかければ数秒もしないで条件検索ができる画面が表示される。その便利さは紙の媒体にはないものであり、比較検討にあたってもボタン一つでクリックするのか、ページを折って印をつけながら検索していくのかという大きな差も生まれている。この広告媒体の差を知るか知らないかで大きな業績差が出てくることはもちろんのこと、経費的に非効率な、もっと言えば不経済な広告を使用することで自らの資金の流れを細くしてしまうことも考えられるのである。逆にいえば、効率的で経済的な広告を打つことができれば新たな試みを考えることができるような余裕が生まれてくるのである。負が生まれるのと余裕が生まれるのでは正反対の効果を及ぼすのである。
また、話は変わるが、アイディアの問題も不況下には大きな影響を与える要因となる。不況時はメンタル面でも暗くなりがちだが、それを跳ね返すような思考がなければ他の烏合の一緒になってしまい競合しながら共に疲弊してしまうことになる。他から少し離れ、独自性を持たせることで競合案件が減少し、共食いすることなく需要に合ったサービスを提供することが可能となる可能性を秘めている。もちろん、需要を見越すような才覚は必要だが、不況だからすべてが厳しい、苦しいということは簡単であり、誰でもできる。その際にどのようなアイディアを持ち、今後に繋げられるビジョンを有するかで勝ち組か負け組か決まるのだと思う。