社員レポート


草野 裕樹

緩やかな時間

不動産業界は今年も繁忙期と呼ばれる季節が過ぎ、少しずつ緩やかな時間が流れだした。振り返って総括すると「場所」と「金額」で明暗を分けた年であったといえよう。例年多くの賃貸物件が入退去を繰り返すこの時期だが、その様相は昨年とも、一昨年とも違ったものになったといえる。
まず、探し始める時期であるが年を越す前から始まり、そこに反応できない不動産物件、会社は大きな痛手を食らっている。実際専門学校の入学生は、学校の定員確保のため早期に合格発表を行っており、それに並行して専門学校新入学生も行動を速めている。大学生にしてもある程度の見通しを立て同時期より携帯サイトやHPなどを利用し検索を開始している。物件に関しても変化が見受けられた。
一番の違いは「拘る」点である。従来であれば「浴室とトイレ」の関係は大きく持ち出されていたが、今年に関しては地下鉄から近いこと、明るいこと、安いことという三つのキーワードがよく聞かれたと思う。特に女性の場合は明るいことは重要で、セキュリティの面にもかなり気を使っているようである。「オートロック」の有る無しも重要であるがそれが一日中作動しているものなのか、夜間のみなのかという細かい点にまで質問が出され、夜間のみであればあまり成約につながるような重要性なポイントにはならないということがお客様の声としていただけた。
また、地下鉄からの距離、学校や職場からのアクセスなども大きな影響を与え、そこに辿り着くまでの環境や照明の明るさなどにも関心が向けられていた。自分が借りる側に立った時、夜遅くなったときなど歩くことを考えると暗い夜道は物騒であるし気分の良いものではない。また、学校や職場が近いから良いというわけでもなく、ある程度の距離は置いておくことも一つの判断ポイントになっていたと思う。地下鉄の駅にもこだわりがあり、近くにスーパーやコンビニがある駅は人気が強く、何もないような駅は判断材料にも入らないような印象があった。物件を選ぶ際、駅から近いから良いという従来の判断は既に変化の対象になっているのかもしれない。
ではなぜそのような変化が生じているのだろうか?通常で考えれば例年の変化に対する沿線上の変化であるはずなのに大きく反転するきっかけ・引き金は何なのだろうか?
変化に影響を与える大きな事象は「経済情勢」と「意識の変化」ではないだろうか?経済情勢は契約に対しても、月の支払いに対しても大きな影響を与える。一か月の家賃等の支出が家計に占める割合が大きくなればなるほど、収入が増えない限りどこかの出費を削減してそれに充てる必要が出てくる。そしてその削減も限界に達するとき、家賃自体の出費を下げるように意識が働くと思われ、今年はその動向が多いような感じが見受けられた。また、マスメディアの影響も強く、雑誌やTVなどで特集が組まれたり、どのようなものがあるか検索したとき経験談なども掲載されているとその内容によっても受忍可能な障害が増減する。特に学校の先輩などのアドバイスは大きな影響を与えるものと推考される。ある専門学校の担当者の方と話したとき、学校体験入学の際にお部屋のことも先輩方に演壇に立ってアドバイスをさせたそうである。その内容はどのような部屋に住んでいて良い点と困っている点、自分で取った対応策など多岐にわたった。その内容は実体験として入学希望者に伝わり、部屋を探す時に振り返り、非常に大きな影響を与えたと思われる。
以上の事柄から変化に対応できている物件=需要に合わせることができる物件は成約率が高く、人気もあったと思う。北大周辺での比較として、同じ年代の、同じような広さ、設備において比較した場合片方は浴トイレ別だが家賃は平均並みで地下鉄から1分の好立地、一方は浴トイレ一緒だがシャンドレも付いており日当たりも良好、家賃も少し割安であったが地下鉄からは徒歩5分だった場合、ほとんどの学生は決まって後者を選んだのである。今年の需要としては「割安」、「ある程度便利」、「日当たり良好」などが重要だったのではないだろうか。そして、「館内にどのような人たちが入っているか」ということも非常に重要なポイントだったと思う。需要を見抜くことが出来るか否かが明暗を分ける繁忙期であったと私は思う。