社員レポート


草野 裕樹

賃貸の動き

不動産業界の繁忙期といわれる3月が終わった。繁忙期は専門学校などの入学者が部屋探しをし始める、前年の11月後半からスタートし大学受験や新社会人の移動などに絡む部屋探しが終わる3月半ばまでであるが、例年賃貸の動きは異なったものになるといえる。今年はスタート時期こそ同じであったものの、エリアはほぼ中心部になってきており北区・中央区が成約の半数以上を占めている。また、昨年末からの世界同時不況により、家計が逼迫してきていることも影響し引っ越しをしないで現状の居住地から交通機関を利用して通うという人たちも多く見受けられた。実際、賃貸の一戸当たり成約家賃単価は昨年度より下落傾向にあり、建物のグレードや部屋の広さを抑えてでも希望家賃の上限を超えない範囲内において最大限要望を満たしているものを選ぶ、もしくは、希望上限の範疇にあったとしてもそれよりも価格が下回るような傾向も見受けられた。部屋を探す人にとって家賃が低いことにこしたことはなく、その中で如何に要望を満たす可能性があり、かつ、最低限の条件だけはクリアしているかというシビアな選択がなされていたことが伺える。
一方、部屋を貸す側にとってはこの繁忙期は空室を埋める最大のチャンスでもあり、退去されてしまう可能性も含む時期なのである。この繁忙期を振り返ってみると入居者から貸主に対して家賃を下げてほしいなどの要望が例年と比べると非常に多かったと思う。その要因としては入居している方の所得の減少、また、同じ棟内における空室賃料との価格差比較などがあげられる。特に中心外縁部にこの傾向は強く、中心部においては少なかったように思える。このような状況から、貸す側としても空室になるよりはという危機感から交渉に応じることが多かった。実際問題として、賃料交渉を蹴って、退去勧告がなされた際に、次の入居者が現状のままもしくは若干の家賃ダウンで早々に入居希望者が見つかるかというと、それは難しい状況であるといえよう。もし、その下落分を考慮し、内装費を足し、空室期間のリスクを考慮したら、家賃を多少下げてでも入居していただいたほうが内装や募集経費・空室リスクを考えても得なのである。また、家賃交渉をある程度飲むことでそれ以上の金額的な要望が出にくくなり、入居期間的にもより伸びる可能性を内包している。
不動産投資はある意味「現実」をそのまま反映させる投資だと私は思う。景気が良くなれば賃借人はより便利な場所、システムを望み部屋を探す。逆に不況時は多少の条件が悪くても、最低限の欲求を満たすような物件でありさえすれば賃料の安さを求めて部屋を検索し始める。
このことから、不動産投資が現実を投影する投資であると仮定するならば、現実の需要にあった物件を選び、設備投資することでほかの物件に対する優位性を得ることができるのではないだろうか、と私は考える。